馬術競技 観戦ガイド&見どころ

本日開幕する北京オリンピック。馬術競技は香港で開催されます。今回を機会に馬術を知ってみませんか?

こんにちはナビです。前回は、北京オリンピック馬術競技が開催される沙田競馬場の施設をレポートしましたが、今回は馬術競技の競技会場の観戦ガイド、競技のみどころをご紹介したいと思います。正直なところ、馬術は日本では一般的な競技とは言えませんので、“香港五輪”は馬術に関するルールや知識を増やすという絶好の機会かと思います。

観戦にあたってのご注意 

■プロパガンダ的な旗や服装、国旗などの着用や持ち込みは禁止
スポーツを観戦するにはあるにはルールがあります。それが大規模な国際イベントになればより厳しい内容になるのは仕方がないこと。それが中国での大会ということになりますともっと制限されたものになると言わざるを得ません(残念な話ですが)。今年に入り、チベット騒動に関連して聖火リレーの混乱があったのは記憶新しいところです。つまり、会場での宗教的・政治的プロパガンダ的な旗や服装、国旗などの着用や持ち込みは禁止されています(チベットの旗は100%バツ。台湾関連もモノによっては駄目でしょう)。

■再入場は基本的に不可
いったん会場を離れた後、再入場は基本的にできません。やむを得ない理由で再入場をする必要がある場合、離場する前に担当者にその理由を説明する必要があり、主催者が認めた場合に限って、捺印をしてもらい再入場が可能となります。

■食べ物、飲み物の持ち込みも不可
オリンピックでは、食料品はベビーフードなど特別なもの以外は、基本的に持ち込み不可です。食料やお菓子は会場内のお店で購入するしかありません。飲み物の持ち込みもできません。その代わりに無料のボトルウォーターが1人1本配られます。私はこれまでのワールドカップやオリンピックの会場に足を運んだことがありますが、はっきり言って利用者の立場からすれば不便です。持ってきたドリンクを紙コップに移し変えてくれるスポーツイベントもありますが、五輪ではそこまでのサービスはしないようです。ペットボトルが当たると危険などの安全面を禁止の理由としていますが、会場内では、コカ・コーラの製品しか売られないでしょう。ようはコカ・コーラのためでもあるはずです……読者の方は私が言いたいことはわかりますよね。クレジットカードも同じで、オフィシャルスポンサーのビザしか使えないはずです。ビザカードを持っていない人は現金を多めに持っていきましょう。なぜこんなことが起こるかといいますと、1業種1社のスポンサーシップというビジネスモデルだからです。この方法はオリンピックを金の成る木に変えましたが、観客にとっては選択肢減らすだけでメリットはありません。なんとかしてほしいものです。

■トイレは混雑が予想

トイレは、男性はそれほど大きな問題ではありませんが、ビッグイベントで女性トイレの前は長い列になることがしばしば。会場を設営した香港ジョッキークラブ(HKJC)はその辺を考量して数を多く作っています。ただそれで並ぶことはないという保証はないので、その辺の状況は頭の片隅に入れておいてください。

■傘の使用も禁止
傘の使用は、他の観戦者の視界を妨げる可能性が高いため、実質禁止されます。そのかわり無料のレインコートが配布されますので、ご心配なく。一方で大きな音を出すようなもの(太鼓など)は持って入ることはできません。規則違反をした場合は、会場から退場させられます。場合によっては逮捕もあり得るようです。主催者側は記者会見では「よほどのことでなければ警察に突き出すことはない」としていましたが、実際はどうなるのでしょうか?
主催者による記者会見。「こちらではブラックリストは作成していない」など政治的な話がどうしても質問としてあがりました

快適に見るには?

完全な屋外競技ですから備えを万全にして楽しく観戦したいものです

完全な屋外競技ですから備えを万全にして楽しく観戦したいものです

競技開始1時間半から1時間前には馬術に関するパフォーマンスが行われる予定になっています。また馬を驚かせてはいけないという競技の性質上、場内実況は行われません。その代わりにラジオで広東語(106.7MHz)と英語(103.2MHz)による実況・解説が行われますのでFMラジオを持っていくことを強くお勧めします。競技の撮影は、自分で楽しむことを目的とする場合のみOKとなっています。
今回は蒸し暑い香港で開催されるということで、日差しが強く気温も高い昼間の開催を避け、早朝または夜に試合が実施されることになりました。6:30、19:15が主な試合開始時間ですが、競技によって微妙に時間が異なっているのでスケジュールはしっかりと確認してください。朝のチケットを持っている人はサングラスを持っていったほうがいいと思いますし、前述の書いたように傘の使用は原則禁止ですから日焼け止めを塗っていったほうが賢明でしょう。

競技について

馬術競技は8月9日から21日までほぼ毎日行われます。オリンピックで唯一、生物を使う競技で、しかも男女の区別がないという非常に珍しいスポーツです。オリンピックで行われるのは「馬場」「障害飛越」「総合」全部で3種類あり、それぞれ個人、団体で争われます。イギリス、ドイツなどヨーロッパが強豪国です。日本からは大岩義明(総合)、法華津寛(馬場)、八木三枝子(馬場)、北井裕子(馬場)、杉谷泰造(障害馬術)、佐藤英賢(障害馬術)の6人が参加します。特に名字のユニークさと東京五輪以来44年ぶりの代表(1988年のソウル五輪でも出場内定を得ていたが、出国直前の検疫検査で陽性反応がでて出場できず)で日本代表の史上最高齢の67歳で参加する法華津寛(ほけつ・ひろし)ライダーは、このほどドイツで行われた大会で5位に入るなどいまだに実力派トップクラス。1932年に西竹一(太平洋戦争の硫黄島の戦いで戦死)とウラヌス号が障害飛越で金メダルを獲得していますが、それ以来のメダルを狙います。
競技会場は2つあります。1つは、沙田競馬場トラック内の彭福公園(ペンフォルド・パーク)及び香港体育学院、もう1つは上水の香港ゴルフクラブの一部と雙魚河(ビーズリバー)です。

◆馬場馬術
50人のライダーが参加する馬場馬術ですが、馬場は20×60メートルの長方形で馬場内にはアルファベットがふられています。“常歩(なみあし)”“速歩(はやあし)”“駈歩(かけあし)”という3種類の歩き方をしつつ、停止・後退、直進・円形・波形に馬を進めます。最初の予選2回は、国際馬術連盟(FEI)が決めた動きをいかに確実にこなすかが問われます。決勝は、いわゆる「フリー」で音楽に合わせて、躍動感あふれる演技を行います。1点から最高10点の点数競技で、計3回の演技で最も多く点数を稼いだ人が勝者となります。このような性格の競技から「Equestrian Ballet」(馬術のバレエ)と呼ばれています。馬がこんな複雑な動きをできるのか…と思わず感心してしまいます。
フィールドはこんな感じです

フィールドはこんな感じです

どれだけライダーの指示に従うか…馬の調教レベルが勝敗を分ける重要な要素です

どれだけライダーの指示に従うか…馬の調教レベルが勝敗を分ける重要な要素です

◆障害飛越馬術
障害は、フィールド内に設置された障害物を、制限時間内にいかにミスなしでクリアできるかを競う競技です。減点の数が同じ場合は短いタイムでゴールした人の勝ちとなります。障害物を飛ぶ順番は決まっていて、その障害物もレンガでできたり、高かったり、低い障害物だけど馬を驚かせるような色づかいであったりといろいろ細工がしてあります。バーを落としたりすれば減点4、障害物の手前で止まったり、左右に逃げてしまうのも減点4ですが、2回目は失格になります。制限時間をオーバーしたら、4秒ごとに減点1が加算されます。
この種目がオリンピックに採用されたのは1900年のパリ五輪という非常に伝統がある競技。75人のアスリートと75頭がエントリーしています。
選手が馬から落下したり、馬が転倒したりすると即失格です 選手が馬から落下したり、馬が転倒したりすると即失格です

選手が馬から落下したり、馬が転倒したりすると即失格です

◆総合馬術
これは本当に「人馬一体」となっているかを競う種目と言っていいでしょう。馬場、障害にクロスカントリーを加えた3つの項目を1日1種目を3日連続で戦うからで、ライダー、馬の総合能力が試されます。無論、この3日間で馬を変えることはできません。
初日は馬場馬術です。決められた動きができるかが採点されます。2日目は香港ゴルフクラブと雙魚河(ビーズリバー)で開催されるクロスカントリー。約5.7キロ(幅は10メートル)のコースを走ります。障害物あり、水たまりあり、上り坂・下り坂ありと厳しいコースが待っています。事前に走行できない一発勝負なので、人間はもとより馬には相当なストレスもかかります。最終3日目は障害です。馬がかなり疲れている状況で障害飛越をします。つまり、馬の身体能力のほかに、選手はこのような状況下でもうまく馬を扱えるか?ということを問われることになります。
荻原健司が活躍したノルディック複合は、持久力のクロスカントリーと瞬発力のジャンプの両方のスキーを行い、勝者は「キング・オブ・スキー」の称号が与えられましたが、総合馬術はそれと同じで「キング・オブ・馬術」を決める競技と言えるでしょう。75組の頂点に立つ選手と馬は?
2日目のクロスカントリーが勝敗の分かれ目。ペース配分が重要です 2日目のクロスカントリーが勝敗の分かれ目。ペース配分が重要です

2日目のクロスカントリーが勝敗の分かれ目。ペース配分が重要です

彭福公園(ペンフォルド・パーク)内にあるクロスカントリー練習場 彭福公園(ペンフォルド・パーク)内にあるクロスカントリー練習場

彭福公園(ペンフォルド・パーク)内にあるクロスカントリー練習場

さあ、五輪が開幕します。今回は、無線電視(TVB)、亜洲電視(ATV)でどのくらい馬術が放送されるかわかりませんが、放送されることは確実です。観戦する機会がある人は、知らないからといって敬遠せずに見てみてはいかがでしょうか?

その他情報

一部の写真はHKJC提供

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2008-08-08

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