香港の歴史街道めぐり 上環(2)

街を散策しながら、香港の歴史的建築物をたずねてみよう。第二回目は香港の学問と文化の発祥地、そして日本でもおなじみの孫文(孫中山)の軌跡が点在する上環から中環を歩いてみましょう。


こんにちは、香港ナビです。前回からシリーズでご案内している香港の歴史街道めぐり。街の中に点在する、歴史ある建物、香港の歴史において重要な場所を、自分の足を使って、ゆっくりと歩いてみるシリーズです。第二回目の今回は、前回に引き続き香港島の上環(Sheung Wan)エリアです。この街には、本当に香港の歴史を感じることができる、ノスタルジック溢れる場所が多く残っています。早速、行ってみましょう。

歩き方のポイント


上環は坂道や階段が多いので、ヒールのない歩きやすい靴でお出かけされることをおすすめします。今回は、ヒルサイドエスカレーターなど、おしゃれなレストランやバーが軒を連ねるSOHOエリアや急な坂が続くエリアを歩きます。外国人でも気軽に立ち寄ることができるお店がたくさんありますので、歴史街道を歩きつつ、現代の香港のライフスタイルもじっくり観察することができますよ。

★スタート地点
スタートは上環と中環の中間に位置する中環街市(セントラル・マーケット)です。MTR上環駅もしくは、中環駅のほぼ中間地点に位置するため、港島線を利用する場合は終点の上環駅で、荃灣線を利用する場合は、同じく終点の中環駅で下車して、10分ほど歩くとよいでしょう。また、時間と体力に自信のある方は、前後に上環(1)や中環を歩くコースを組み込み、途中から今回の上環(2)のコースに入ることも可能です。
★所要時間(徒歩)
スタート地点の中環街市から最後のハリウッドロード周辺まで、所要は約1時間です。途中、高級住宅地のロビンソンロードを20分ほど歩くコースがあるほかは、急な坂道が多いコースです。長距離を歩くことに慣れていない方、真夏に歩く方は無理をせずにゆっくりと休憩をしながら歩きましょう。途中、孫中山紀念館があるので、ここで一休みするのもよいでしょう。
1 中環街市
まずは、MTR港島線、荃湾線中環(セントラル)駅を出て、中環街市へ向かいましょう。巨大ショッピングモールifcとSOHOのヒルサイドエスカレーターの二つの観光エリアの中間地点にある中環街市。香港でもっとも古い歴史を持つ街市のひとつでです。中環街市の前身は1843年に皇后大道中(Queens Rd Central)に作られた広州市場で、1858年に現在地に移った後、幾度かの改築を経て、1939年に現在の建物が完成しました。バウハウス形式の質素な作りですが、香港の三級歷史建築物に指定されています。日本軍の香港占領時代には中央市場と改名されました。この建物、実は香港で初めての女性用公衆トイレを併設した街市だそうです。2003年3月に街市としての利用が終了した後は政府による取り壊しが予定されていましたが、香港市民の反対を受け、現存の建物を文化活動や市民の憩いの場として再利用するプロジェクトが計画されています。

2 砵典乍街(石板街)
中環街市を出て、皇后大道中(Queens Rd Central)の交差点を渡ると砵典乍街(Pottinger St)があります。急な坂道が続くこの通りは、上は荷李活道(Hollywood Rd)まで続きます。通りの名前は初代香港総督Henry Pottingerから1858年に砵典乍街(Pottinger St)と名付けられましたが、石板を敷いて作られた坂道ということで地元の人々からは「石板街」と呼ばれています。地面に凹凸をつけた石敷きの坂道は歩行しやすく、また雨水が坂道の両側に流れていくため、非常に重宝されたそうです。香港の一級歷史建築に指定されています。

3 中區警署建築群
砵典乍街(Pottinger St)を上がり、荷李活道(Hollywood Rd)にたどり着くと、目の前に石造りの大きな建物が見えます。この一角には旧中區警署(旧セントラル・ポリス・ステーション)、旧中央裁判司署(旧中央裁判所)、旧域多利監獄(旧ヴィクトリア監獄)という3つの歴史的建築物が並んでいます。現在、すべての建物は使用されておらず、今後、美術館などの文化施設としての再開発が進められ、新たな観光スポットとして再スタートする予定です。これらの建物はすべて香港の香港法定古蹟に指定されており、現在は一般公開されていません。
★旧中區警署
旧中區警署は、1864年にヴィクトリア監獄を併設した3階建ての質素なバラック作りの建物からスタートしました。その後、1925年まで本建築の増築、建物の追加を重ね、現在の形になっています。ハリウッドロードに面した重厚なドーリア式の柱を持つ総本部は1919年に完成しました。石造りの建物に青色の窓枠が美しい外観は一際目を引きます。

★前中央裁判司署
旧中區警署に隣接する前中央裁判司署。1847年に完成した初代の建物は1913年に取り壊され、1914年に現在の建物が完成しました。1979年に裁判司署が別の場所に移動した後、建物は香港国際仲裁中心、入境事務所や香港警察署のクラブハウスとして利用されました。現在は一帯の建物と共に再開発計画が進んでいます。1914年に完成した建物は古代ギリシャ建築をベースにデザインされ、ギリシャ神殿を彷彿とさせる巨大なカラム(柱)が特徴的です。また、建物内部には被告人を移送するための地下道があるそうです。

★域多利監獄
域多利監獄(ビクトリア・プリズン)は香港で最初の刑務所で、2006年まで使用されていました。第二次世界大戦中の爆撃により建物の多くは破壊されましたが、その後再建され、1995年に香港法定古蹟に指定されています。赤いレンガ造りの頑丈な建物は網走刑務所の縮小版のようです。

4 回教清真禮拜堂
中區警署建築群を後にして、ヒルサイドエスカレーターで更に上に上がりましょう。エスカレーターの両脇には西洋人が集まるバーやパブ、カフェが軒を連ねています。堅道(Cane Rd)を越えて、すぐ左手に青々として緑に囲まれたペパーミントグリーンの寺院が見えます。ここは香港で最初のイスラム教寺院で、通称「摩羅廟」と呼ばれています。1849年に初代の寺院が完成し、1915年に改築されました。一般には公開されていないため、中に入ることはできませんが、建物には1849年当時に作られた塔がそのまま残っており、建物の外壁や窓には美しいアラビア装飾が施されています。

5 甘棠第(孫中山紀念館)
堅道(Cane Rd)に戻り、西へ10分ほど歩くと辛亥革命を指導したことにより「革命の父」「国父」という呼び名で仰がれる孫文(孫中山)の生誕140年を記念して作られた記念館「甘棠第(孫中山紀念館)」があります。この記念館は1914年に落成した「甘棠第(Kom Tong Hall)」と呼ばれ親しまれた、当時としてはとても珍しい鉄筋コンクリートの4階建ての建物を利用しています。エドワード王時代のクラシカルな趣が随所にあふれ、ステンドグラスがはめ込まれた窓や小さなタイルがていねいに敷き詰められたバルコニー、磨きこまれた手すりなど、保存状態の良さと当時の華麗な暮らしぶりがわかるような美しい建築の良さを生かしたままに改装されています。歩きつかれた方は記念館で一休みしてはいかがですか?

6 百子里
孫中山紀念館を出て、鴨巴甸街(Aberdeen St)の急な坂道を下りましょう。この通りは古い建物の一部を利用したおしゃれな雑貨店やアートギャラリーが並んでいます。
坂道に面してお店が並んでいます。転ばないように注意して。 坂道に面してお店が並んでいます。転ばないように注意して。

坂道に面してお店が並んでいます。転ばないように注意して。

10分ほど坂を下ると、右手に三家里(Sam Ka Lane)と書かれた小路があります。一見すると何の変哲もない裏道ですが、中に入ると古い建物と建物の間にぽっかりと空いた空間に新しい公園があります。ここは1895年に孫文が創立する「香港興中会」と合併し、革命運動を活発化させた「輔仁文社」の創立者、楊衢雲と謝纘泰が革命集会を開いていた路地裏で、まさに孫文の革命の出発地点ともなった重要な場所です。公園内には輔仁文社の教えを記したモニュメントや1892年から1903年にかけての革命の歴史などが詳しく紹介されており、中国の近代史に興味がある人なら、ぜひ訪れて欲しい場所です。

いかがでしたか?西洋人が集まるお洒落なバーや、世界中のグルメを楽しむことができるSOHOエリアも一歩小さなストリートを中に入ってみたり、少し道を反れて寄り道をしてみると、そこだけ時が止まったような不思議な空間がまだまだたくさん残っています。以上、香港ナビがお伝えいたしました。
関連タグ:SOHO孫文歴史歴史建築

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2013-06-18

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