トラム

　数年前のとある日のことです。大好きなホテル周辺の朝の散歩も
終え、いつもなら地下鉄でいそいそと「香港海防博物館」へ急ぐの
に、その日は、差し迫った用事もなかったので「トラム」で行くこ
とに決め「西營盤（サイインプン）」のホテルを１０時過ぎに出立
しました。
　 「海味街（ホイ・メイ・ガイ）」 からトラムに乗車、上環、中
環とのんびり歩を進めたのです。
　　
　同乗するのは、「株式欄」に読みふけるお年寄りや、家族を遠い
ふるさとにおき、「あまさん」として買い物にいそぐフィリピンの
女性たちです。末永い「健康」に恵まれますように。　

　両替すべく中環の最寄で下車、いきつけの「交通銀行香港分行」
で用事を済ませます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　Pedder　Sｔ．のはす向かいのランドマークの入り口には、買い物
を済ませ、いまやお抱えのベンツを待つ香港マダムらしき人を、必
ずといっていいほどみかけます。心底、彼女の「富」の永遠をお祈
りするものです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　トラムへ再度乗車し、２階席に。暇なときのトラムは２階席の先
端に勝る席はありません。激しい左右への振動もものかは、金鐘−
灣仔−銅鑼灣と移り行く都市国家の景観を楽しみます。
　歩を進めるにつれて、その光景は満艦飾の洗濯物がはためく、北
角、太古の古びたマンション群をすり抜けるように過ぎ行き、ほど
なく終点のショウ箕湾に僕をいざなってくれるのです。

　「香港海防博物館」で４〜５時間ほど読書、昼寝、食事をこな
し、帰途は「ショウ箕湾」から地下鉄で上環へ、そこで再度トラム
を駆って「堅尼地城」の埠頭へ急ぎ、地元の方々と暮れるまで海釣
りに興じます（メッセージ番号447に詳細を書き込んであります）。
　「何も香港でなくても」とは家人の言い分でしたが、後に家人を
伴い、同様の一日を過ごした後には理解を獲得できたのものです。