中環「セントラルフェリーターミナル」4号埠頭から「南Y島」の索罟湾港内に開設された「漁民文化村」にたどり着きました。 「漁民文化村」に係留されていた「漁船」の船殻のパーティションの一つ一つが、「塩、氷、生簀、淡水、食品」などの倉庫を兼ねており、普段船がかりされていた、いわば「母港」から出航し、何十日ものワンダリング(ここでは漂泊操業の意)を可能としたのでありましょう。
海水が自由に出入り出来る「生簀」も、この漁船の優れた点でもあります。 また、家屋部分の屋根が、わが国では「苫(とま)葺き」や、テント掛けであったのに、このジャンクは板で覆われてあり、塩干魚の製造(この海域で製造された塩干魚は大量に大陸内部に移送されていたということです)に利用されていた様子でした。
船内外は「桐油」で磨きたてられており、往時の生活も思いのほか清潔であったことがしのばれました。
わが国の「家舟」は「舳先」から「艫(ともー船尾のこと)」までほぼ一定の高さを保っている構造が一般的でありましたが、このジャンクは「船首」が「船尾」より心持ち低く、「居住性」や「操進性」を高めている、といった工夫がみられました。
ただわが国の「家舟」も、この「水上居民」のジャンクも、そうでなくても狭い室内に「神棚」を設え、居室に所狭しと朱赤の「御札」が張りめげられている所など、当時も今も、国内外を問わず「漁労」が命がけの過酷な「生業」であったことを物語っていて、胸ふさがるおもいでした。
さて、「巻き網」や「トロール」などの大型漁業、刺し網や魚籠や投網などの磯漁と並び、今香港では、「内水面」や「湾内」の「養殖、栽培漁業」が注目されているそうです。
ガイドしてくださった方によれば、ここ南Y島でも漁獲が不安定な「遠洋漁業」よりも、「養殖、栽培漁業」に力を注いでいるとのことでした。
香港特別行政区内には行政の後援もうけ、29箇所の「養殖先進地区」が設けられていて、稚魚を大陸やタイ、フィリピン、インドネシアから輸入し、人工飼料等で育成、出荷しているとのことです。
5000隻の船に、10000人ほどが就労していて、現在の課題は、台風などの自然災害は勿論のこと、「工場排水、農業廃水、生活排水」などによる水質の「富栄養化」で発生する「赤潮」などの人工災害と戦っているといいます。
さて、この「南Y島漁民文化村」を一覧して、「漁労」「加工」「生活」を取り扱っている点では満足できる施設ではありましたが、索罟湾の埠頭の付け根の左側の公園等を改造し、「流通」にかんする展示館を設ければ、漁業、漁民の一体を捉える文化施設となりうる可能性を感じました。
といいますのも、漁業は御多分に洩れず「漁民」や「加工業者」は労の割にはその収益が乏しく、「流通業者」や「卸売業者」に利益を奪われることが多い産業です。その「流通」の過程まで扱ってはじめて「文化村」の名称にふさわしい施設とみなされるのでしょう。
流暢な英語をあやつるガイド氏(さてここに、私の聞き取り能力の過小さから彼が私に伝えようとしていることのほんの一部も書くとめてはいないことを白状しておかなければなりません)も、肌の浅黒さと手指の皮膚の厚さから漁業に携わっている青年でしょう。彼らの「海」や「生業」が永久に引き継がれんことを祈るばかりです。
この施設の詳細はwww.fisherfolks.hkに紹介されております。いまのところ「中文」だけですが、どうにか理解できそうです。
開園時間は10時から日没まで、無休。2時間券が40香港ドル、一日券は60香港ドル。索罟湾へは、?レインボー・スター・クルーズがセントラルのクイーンズ埠頭、アバディーンの公共埠頭、ディズニーランド・ピア、スタンレーのセント・ステファン埠頭から運行、?港九小輪有限公司によりセントラル・フェリーターミナル4号埠頭から運航されています。(2006年4月)
|