3月21日から約1カ月半に渡って250本以上の映画が上映される映画祭。香港やハリウッドのみならず、日本、世界中から選りすぐりの作品が観られます。今年はキアヌ・リーブスによる座談会も。
みなさん、こんにちは。香港ナビです。3月下旬から5月上旬にかけて毎年、香港国際映画節(Hong Kong International Movie Festival。通称:HKIFF)が開かれています。今年は3月21日から5月4日までの約1ヶ月半にわたり300本近い映画が上映されます。映画では世界的地位を固めている香港で開催される映画祭とあって世界からも注目を浴びています。どんな映画祭か紹介していきましょう!
東京国際映画祭よりもずっと大きな香港国際映画祭
香港はわずか700万人という人口で世界で通用する映画を作れる街です。人材の質が高い上に、長年築いてきたノウハウが生かされていうこと、また英語が公用語であることが世界でビジネスをする上で大きな利点となっています。
HKIFFは日本で最も有名な映画祭、東京国際映画祭(TIFF)とは規模が違います。2011年のTIFFの開催期間はわずか9日、上映作品は128本、総上映回数は315回でした。一方のHKIFFは、45日間、上映作品は283本、総上映回数は431回とその差は歴然としています。今年は50カ国・地域から集まり、ワールドプレミアは8本、アジアのプレミアが41本も揃います。
なぜ東京とこれだけの差が出たのでしょうか? 香港の場合は積極的な政府の支援があげられます。この時期は香港影視娯楽博覧(Entertainment Expo)と称して、映画祭だけではなく、香港のアカデミー賞である金像奨(Hong Kong Movie Awards)、亜洲電影大奨(Asian Film Awards)、香港国際影視展(Hong kong International Film & TV Market)、香港亜洲電影投資会(Hong Kong-Asia Film Financing Forum)、香港亜洲流行音楽節(HK Asian-Pop Music Festival)など“エンタメ”の展覧会やイベントが満載だからです。前述のAsian Film Awardsは東京で開催されてもおかしくないのですが、実現にこぎつけたのは香港です。これはどういうことを意味するのか、ナビが改めて説明する必要もないでしょう。
水野美紀主演の「恋の罪」は、監督の園子温がアジアンフィルムアワードの最優秀監督賞のノミネート
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たくさんの映画が上映されるので、観るほうもうれしい悲鳴です
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オープニングとクロージング
ヒット作の続編だけに期待が高まる「春嬌與志明」
さて、どんな映画が上映されるのでしょうか? オープニングは当然ながら香港映画。楊千嬅(ミリアム・ヨン)と余文楽(ショーン・ユー)による「春嬌與志明(Love in Buff)」。監督は彭浩翔(パン・チョーホン)です。これは東京国際映画祭でも上映されたことのあるラブコメディー、「志明與春嬌(Love in Puff)」(日本題:恋の紫煙)の続編です。喫煙がきっかけで知り合った2人。急速に気持ちが冷めた後、お互いに理想の相手を見つけたが、北京で再開し・・・。この映画はワールドプレミアとなっています。
クロージングは今年のベルリン国際映画祭のコンペティション部門にエントリーした王金安(ワン・チュアンアン)監督の「白鹿原(White Deer Plain)」。こちらはアジアンプレミアです。07年に「図雅的婚事(Tuya’s Marrige)」(邦題:トゥヤーの結婚)で同映画祭金熊賞に輝いたワン監督の作品です。小さな村にある2つの名家が土地の利権に関する争いを描いた作品です。
またガラプレミアとしてフランスのセザール賞6部門にノミネートされた「陽光抗癌大作戦(Declaration of War)」(邦題:愛の宣戦布告、原題:La Guerre est Declaree)も注目を集めています。悪性の腫瘍におかされてしまった幼い子どもをもつカップル。その戦う姿や出来事を描いています。
キアヌ・リーブスに会える
キアヌ・リーブスが映画界の大物にインタビューするドキュメンタリー・フィルム
映画祭では俳優や監督に会えるのが大きな魅力です。3月18日に「マトリックス」シリーズや「スピード」で有名なキアヌ・リーブスが香港にやってきます。映画の宣伝だけではなく何と香港で無料の座談会を開くのです。ベルリン映画祭でプレミア上映された「追蹤電影未来(Side By Side)」というドキュメンタリー映画は彼がプロデュースしました。フィルムとデジタルについて掘り下げた映画で、キアヌ・リーブスはジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシ、ジェームス・キャメロンなど大物監督にインタビューをしています。マトリックスというデジタル技術の先端を駆使した映画をヒットさせた彼がどういう意見を展開するのか楽しみですね。
「金枝玉葉(He’s a Woman, She’s a Man)」(邦題:君さえいれば)、「甜蜜蜜(Comrades, Almost a Love Story)」(邦題:ラブソング)、「投名状(The Warlords)」(日本題:ウォーロード/男たちの誓い)などヒット作をいくつも作製してきた香港監督の1人といえば陳可辛(ピーター・チャン)です。今回のHKIFFでは彼の作品のうち12作を一気に上映します。彼にフォーカスをすることを記念して、陳監督が4月3日に特別講座を開きます。映画、芸術など彼独特の見解を聞けるよい機会です。また、講座参加者には限定の特性ノートが配られる予定です。
どちらとも応募は無料で先着順。
新旧が揃った日本映画
お笑いだけではなく監督業にも進出した松本人志の最新作「さや侍」
日本の映画もたくさん公開されるのがHKIFFの特徴です。吉高由里子、五十嵐信次郎の「ロボジー」(G系機械人、Robo-G)は日本で公開されたばかりですが、HKIFFでインターナショナルプレミアとして上映されます。ダウンタウンの松本人志監督の「さや侍」(空鞘武士、Scabbard Samurai)、市川海老蔵主演の「一命」(一命、Hara-kiri: Death of a Samurai)などが香港で見られます。ベルリン国際映画祭でも上映され,、アジアンプレミアとなる船橋淳監督の「ニュークリア・ネイション」(核能国族、Nuclear Nation)は東日本大震災で被災した福島県双葉町の避難生活を記録したドキュメンタリー映画です。
実験映像作家として知られる伊藤高志の作品3つをフィーチャーしたり、1950年代の日本映画を引っ張った鬼才、川島雄三の映画が6作品公開されます。「洲崎パラダイス赤信号」(洲崎楽団-赤信号、Suzaki Paradise: Red Light)、「幕末太陽傳」(幕末太陽傳、The Sun in the Last Days of the Shogunate)、「しとやかな獣」(温厚的獣、Elegant Beast)といった代表作が含まれます。「南極物語」などを監督した蔵原惟繕の映画も香港で見られます。60年代に製作した「熱狂の季節」(熱狂的季節、The Warped Ones)、「黒い太陽」(黒太陽、Black Sun)などが特集されます。映画全盛期のころの息吹を感じられると思います。
世界の映画がずらり
これはドイツ映画の「三生組曲 Drelieben」
“グローバルビジョン”と銘打って、世界の映画を堪能のできるのがHKIFFです。ハンガリー、アルゼンチン、オーストリア、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チェコ、ドイツなど普段なかなか見ることのできない映画も数多くラインナップされています。
また、1920年代から70年代というクラシック作品の上映されます。例えば、ロバート・デ・ニーロの若き日にの映画「的士司機 (Taxi Driver)」(邦題:タクシードライバー)などです。さらにポーランド映画特集、大学生による作品、アニメーション、インディ系など多岐にわたる映画が用意されています。
チケットの購入方法
チケットですが、購入方法が多岐にわたるので、TPOにあわせた買い方ができると思います。まず「VIP通行證(VIP)」です。価格は4500ドルで映画開始15分前までに映画館に連絡および到着すればほとんどの映画を鑑賞できるなどの特典があります。「影癡通行證(Super Value Pass)」(2500ドル)は、売り切れていない映画であればほとんどを見られるチケットです。これら2つのパスはwww.hkiff.org.hkで購入できます。支払い方法は小切手かクレジットカードです。
見たい映画のチケットを購入するには(価格は100、65、45、40ドルのいずれか)上記と同じ映画祭のウェブサイトであるwww.hkiff.org.hkからの申し込み、HKIFFが開催される映画館での窓口、城市電脳售票網(urbtix)というチケット販売のウェブサイト(www.urbtix.hk)から購入できます。チケットは各カウンターで受け取るか、香港文化中心(Hong Kong Cultural Centre)などの15箇所に設置された自動発券機、日本を含めた海外在住者には25ドルを追加で払えば郵送もしてくれます。
会場ですが、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)の香港文化中心を中心に香港内11カ所で開かれます。会場のほとんどは香港中心部で行われますので心配ありません。カタログには詳しい行き方が書かれているので心配は無用です。
いかがでしたか? 普段の映画館では上映されにくい作品が多いです。この機会にそういった映画を心ゆくまでじっくり楽しみたい人はHKIFFに足を運んでみてください。以上、香港ナビがお送りしました。
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記事登録日:2012-03-13