毎年恒例の香港インターナショナルレースは、今年も新型コロナウイルスの影響を受けましたが有観客での開催となりました。昨年同様に、国際G1レース4つのうち2020年に引き続き日本馬が2勝と活躍を見せました
みなさんこんにちは。香港ナビです。「香港国際賽事/Hong Kong International Races(HKIR)」が12月12日に沙田馬場(Shatin Racecourse)で開かれました。メインの香港カップでラヴズオンリーユーが勝つなど4つのG1レースのうち日本馬が2020年と同じ2勝上げるなどコロナ禍でも活躍しました。
2回目のコロナ禍でのHKIRのレーシングバブル
HKIRは短距離から中距離のG1レースが1日4レース開かれる世界的に名を知られているイベントです。2020年はHKIR直前の11月末に第4波が発生し、無観客での開催となりました。香港は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験を活かして、世界各国と比べると厳しい水際&防疫対策を実施してきまして、世界が苦労したデルタ株もほとんど抑え込みに成功しました。2021年の香港は、中国本土との往来との関係重視からゼロコロナを推進していまして、防疫対策自体は2020年より厳しくなっています。
つまり、2021年のHKIRの開催にあたり2020年より厳しい防疫措置が取られました。いわゆる「レーシングバブル」といわれる措置ですが、特に海外から渡航者を通じてウイルス侵入させ、市中感染の原因になってはいけないという意志が強く感じられます。例えば、海外から参戦する競馬関係者の場合、香港ジョッキークラブ側がプライベートジェット機の手配をしてくれます。参加するにも香港到着7日前と48時間前に2回のPCR検査を受けて陰性であること、到着後も毎日PCR検査を受けなければなりません。
東京五輪でも選手などは競技会場と選手村の2つしか訪れることができませんでしたが、HKIRの場合ケースは、ホテルと沙田馬場と跑馬地馬場(Happy Valley Racecourse)の3カ所のみに滞在することが可能です。香港に街に出て食事にすることはできません。パドックでもソーシャルディスタンスで、馬主、トレーナーとジョッキーの間は1.5メートルのソーシャルディスタンスをしなければいけません。また、香港における新型コロナ追跡アプリである「安心出行(LeaveHomeSafe)」もダウンロードし、必要な場所で掲示されているQRコードをスキャンしないといけません。
一方で、2020年は無観客開催で関係者のみが会場を訪れることができましたが(271人)、今年は一般客に開放されました。もちろん、座席にもソーシャルディスタンスが求められたので、2021年の観客はは1万8600人です。それでも前年からみると、大きな進歩だと思います。
香港ヴァーズ(2400メートル)
日本ダービーと同じ距離の香港ヴァーズでHKIRの4つのG1レ―ス中、最も長い距離を走ります。日本からの出走馬を見ると、2019年のこのレースの覇者であるはグローリーヴェイズが再び参戦。2度目の戴冠を狙います。ほかにもステイフーリッシュが参戦しました。
レースですが、騎手のジョアン・モレイラが手綱を引いたグローリーヴェイズは後方で待機し、4コーナーで外に持ち出して一気に加速します。残り100メートルでトップに立つと最後は1馬身の差をつけて優勝しました。完勝と言っていい内容でした。ステイフーリッシュは5着でした。
単勝1.8倍の圧倒的人気に応えたモレイラ騎手は「すべて期待通りにことが進みました。強い馬であることはわかっていましたいから、内ラチ沿いをスムーズに走らせて、進路を確保するだけでした」と語り「今日、強い馬だと証明してくれましたね」とも語りました。尾関知人調教師は「前回は初めての香港だったので体重が減った部分があったのですが、2度目の香港で体重も落ちず、リラックスしていたので、馬の力を出せる状態でレースにのぞめました」
香港スプリント(1200メートル)
最速馬を決める香港スプリント。日本からは福永祐一騎手のピクシーナイト、川田将雅騎手が乗るダノンスマッシュ、クリストフ・スミヨン騎手が鞍上するレシステンシアの3頭が出走しました。
ただ、このレースでは落馬事故が発生していました。4コーナーの外側で3番手につけていたライル・ヒューイットソン騎手のアメージングスターの前脚に故障が発生して前のめりになって転倒。後ろにいたラッキーパッチ(ザカリー・パートン騎手が騎乗)が倒れているアメージングスターに引っかかって同じく転倒してしまいます。ラッキーパッチの左後ろにいたダノンスマッシュは、バランスを崩しながらもなんとかアメージングスターを交わしましたが、これが影響して8着となりました。ラッキーパッチの真後ろにいたカリス・ティータン騎手が鞍上するナブーアタックはアメージングスターに躓いた後、ラッキーパッチにぶつかって転倒してしまいます。さらに後方の外目を走っていたピクシーナイト。福永騎手はさらに外側に進路を取りながらコーナーを回っていたのですが、転倒して何とか立ち上がろうとしていたアメージングスターに衝突して転倒。ピクシーナイトは競走中止となりました。
レースは、残り100メートルを切ってトップに立ったブレイク・シン騎手のスカイフィールドが勝利しました。2着には転倒事故が起きた際、進路をうまく右に回避することでかろうじて走り続けることができたレシステンシアでした。
アメージングスター、ナブーアタックが予後不良で安楽死処置となり、ピクシーナイトも左前膝を骨折しました。転倒で馬場に投げ出された福永騎手は沙田の病院に搬送され左鎖骨骨折と診断されました。ヒューイットソン、パートンの両騎手は検査のために病院に向かいました。川田騎手とダノンスマッシュは無事でした。特にアメージングスターは、転んだ後も故障した前足で必死に立って走ろうとがんばってみるものの、立てない姿は、時折、現れる競馬の難しさや厳しい現実を見せつけられ、心が痛みました。
香港マイル(1600メートル)
マイルは、香港からは2018、2019年と勝利した名馬、ビューティージェネレーションの3連覇を阻んだゴールデンシックスティが2020年に続く連覇を狙います。日本からはダノンキングリー、昨年も出たインディチャンプ、サリオス、ヴァンドギャルドの4頭です。
レースはサリオスが先頭で馬群を率いり、ゴールデンシックスティは6番の中団の内側を走ります。残り300メートルから150メートルぐらいまではサリオスとゴールデンシックスティのたたき合いなりましたが、最後はゴールデンシックスティが2馬身抜け出して2連覇を達成しました。これで16連勝。通算成績でみても第4戦目に10着になったものの20戦19勝という抜群の戦績。香港競馬が1971年にプロ化されて以降、サイレントウィットネス、ビューティージェネレーションを抜いて最多勝となりました。サリオスは粘って3位、インディチャンプは5位、ヴァンドギャルドが6着、ダノンキングリーは8着に終わっています。
鞍上のヴィンセント・ホー騎手騎手は「彼はすばらしい。言うことがない。彼がベストなのはわかっていました。2番ゲートからのスタートは少しトリッキーでしたし、内側で馬が詰まることは嫌でしたが、ペース自体は良かったので、そのまま行きました。馬は6歳になって成熟してきましたし、さらに良くなってますね」と冷静に勝利を振り返っていました。
香港カップ(2000メートル)
HKIRのメインレースの香港カップを勝ったラヴズオンリーユー。ほかの日本馬では、2着に入り日本馬によるワンツーフィニッシュを実現したヒシイグアスと6着だったレイパパレの3頭が走りました。
ラヴズオンリーユーは、2019年にG1のオークスで勝った後、2021年4月に同じ沙田競馬場で行われたG1のクイーンエリザベスカップ、11月にアメリカでのブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ(G1)に勝利。あのブリーダーズカップに日本馬で初めて勝ち、香港でも勝ったことから単勝2.6倍の1番人気におされました。道中は5番手をずっと走っていました。少しだけ他の馬に挟まれる展開ですがうまく折り合いをつけています。4コーナーを抜けると前の馬に進路を塞がれ行き場を失いそうな形になりましたが、それでも馬群の隙間を縫ってきて出てきます。外からはずっと後方に待機していたヒシイグアスが一気に先頭に立とうとしますが、ラヴズオンリーユーが巻き返して馬体と合わせるたたき合いに。2頭は残り50メートルでトップを走っていたいたロシアンエンペラーを抜き去り、さらにラヴズオンリーユーが一歩抜け出て勝利しました。
今年6戦4勝で、うち海外G1が3勝。複数年かけて海外G1を3勝する日本馬は過去にモーリスなどがいましたが、同一年に海外G1・3つは日本競馬史上初。このレースで引退し繁殖牝馬になるのですが、少し早いのではないかと思えるほどの勝負強さを発揮しました。香港スプリントでのアクシデントを乗り越えて勝利した川田騎手は「ゲートもいい形で出てスムーズに良いところを走っていましたが、スローペースがあまりにも遅いなとは思っていました。ブリーダーズカップ、香港カップと大きな勲章を彼女が私にくれたと思います」と喜びました。
いかがでしたか? 今回は新型コロナの影響もありヨーロッパ勢の出走が少なめで、日本馬対香港馬と言う側面はありました。しかし、2019年3勝、20年と21年は2勝しており、香港で勝つためのノウハウを日本の競馬界はかなり蓄積したような気がします。今後の活躍も期待したいですね。以上、香港ナビがお伝えしました。
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記事登録日:2021-12-15