FOODYの食べ歩きシリーズ 第6弾-アワビ

FOODYの食べ歩きシリーズ 第6弾

こんにちは、香港ナビをご覧の皆さん。僕の日本人の友人が香港に遊びに来ると、いつも決まってみんな「高級中華料理が食べたい」という。日本でも場所によっては香港と同じレベルの本格的中華を食べることができるけれど、香港とは調理方法や味付けが違い、本場とは違う料理になっていることが多いからだそうだ。調理方法によって味がまったく変わってくる高級中華のよい例が、今回ご紹介するアワビ料理だ。

アワビは広東語で、鮑魚(バオ・ユ)という。原産地としては日本が一番有名だが、広東料理ではアワビをよく使うため、香港は世界の中でも良質なアワビが手ごろな値段で手に入る街として知られているのだ。アワビは味がもともと淡白。アワビ自体の素材の良し悪しも重要だが、調理方法によっておいしいかどうかが決まってくる。今回は、アワビの見分け方から、主な種類、調理法を皆さんにお教えしようと思う。

素人でもわかるよいアワビの見分け方

ポイント1<へこみ>
まずはアワビの裏表を見て、へこみがあるかどうかをチェックする。へこんでいるものは、中が腐っている可能性があるので要注意。

ポイント2<手触り>
裏を触ってみて、つるつるしているのは上質の証拠。逆に靴底のようにぎざぎざになっているものはあまりよいものではない。

ポイント3<大きさ>
アワビは大きければ大きいものほどよいとされる。成長したアワビの方が、味に深みがあるからだ。2年以上乾燥させたものは「旧水」、乾燥させて間もないものは「新水」と呼ばれる。古いものの方がもちろん価値は上がり、値段も高くなる。

ポイント4<色>
上質のアワビは通常褐色をしている。しかし上質なアワビの中にも、私が手にしているアワビのように、一見するとカビが生えたような粉っぽいものもある。これは上質の「旧水」アワビである。この色を見て、腐っていると思う人もいるが、カビのように見えるものは塩分で、乾燥する過程でアワビの中の塩分が表面に出ただけである。

<頭>とは?

香港では、アワビのサイズは「頭(タウ)」で表す。これは1斤(約600g)あたりに何個のアワビが入るかということを示す。三頭と十四頭の二つのアワビがあるとすると、数字が小さいもの、つまり三頭の方が一個あたりのサイズが大きく、金額が高くなる。

世界3大アワビ網鮑・吉品鮑・禾麻

網鮑(モンパオ)、羅取鮑(モンチョイパオ)
日本の羅鮑(身取り鮑)のこと。アワビに網の模様がついているため、「網鮑」と呼ばれるようになった。サイズが大きいので肉厚なしっかりとした歯ごたえが楽しめ、柔らかくちょっと粘りのある繊細な歯触りが特徴的だ。日本では青森県が最も有名な産地として知られている。通常、十頭を超えるものが一般的で、それ以上のものは網鮑ではないと言われている。生産量が少なく、一つずつ丁寧に両面を天日で丁寧に干すため、非常に高価になる。昔はアワビの数が今よりも豊富だったため、表面を削り一番おいしい中身だけスライスして食べたそうだが、高級品となった現在では、まるごと一個を使うことがほとんどだ。今から考えればずいぶん贅沢な食べ方だ。
表

裏

調理済み

調理済み


吉品鮑(ガッパンパオ)
岩手県大船渡市吉浜産のアワビを「吉品鮑」と呼ぶ。この名前は産地に由来している。形は細めで身が厚く、両端が尖っているのが特徴。まるで人間の目のようだ。ひらひらとした硬い部分が肉厚なので、非常に弾力があるアワビである。縄で縛って干すため、縄の痕がアワビの表面に残っている。コリコリとした歯ごたえが楽しめる。
裏表

裏表

縄の跡がはっきり見える

縄の跡がはっきり見える

乾燥状態(右)と調理済み

乾燥状態(右)と調理済み


禾麻(ワォーマー)
青森県大間町産のものが多い。「禾麻」というのは、「大間(おおま)」という発音に由来している。他のアワビと比べて表面に潤いと光沢があり、三頭~九頭サイズのかなり大ぶりなものが一般的だ。アワビを一つずつ串刺しにして干すため、穴が開いている。吉品より少し柔らかい食感だ。
裏表

裏表

穴が見える

穴が見える

乾燥状態と調理済みを並べてみた。尖った部分はアワビの口。アワビのエサは、ワカメや昆布などの海藻類だが、砂を食べている場合があるので、調理をする時は口をまず取るのが一般的だ。

値段について

値段は質と大きさで決まる。アワビは、特級、特級1級、特級2級、特級3級に分類され、「特級」が最高級だ。特級3級は特級の3割ぐらいの値段で取引きされる。つまり、特級が1000ドルとすると、特級3級は300ドルという具合だ。それだけ物によって値段が違う。特級網鮑八頭(一斤あたり8個)は、20,000香港ドル(約300,000円)以上もする。吉品(特級2級)の二十一頭は、14,000香港ドル(約210,000円)。また、禾麻(特級)十二頭は、19,300香港ドル(約289,500円)もの値がつけられる。干しアワビを買って自分で食べる場合は、(海の幸の乾物)の老舗、西環の乾物通りにある「南北行」を薦める。

アワビの産地

生のアワビはまず塩で味付けをして茹でる。茹でた後、天日で干す。この干した状態を乾鮑(ゴンバオ)という。干す時は、日差しが強くない湿気の低い天候が一番よい。日本の岩手県と青森県がこの二つの条件を満たしているため、良質のアワビの生産地として有名なのもうなずける。日本以外にも、南アフリカやオーストラリア産も有名だ。昔は香港の「吐露港(沙田と大埔あたり)」がアワビの養殖地として知られていたが、海洋汚染が激しく残念ながら現在では香港にアワビの養殖場はない。

中華アワビの調理法と味

アワビをきれいに洗い、鍋に並べてからアワビがちょうど浸るくらいの水を注いで煮込むのが一般的。さらに鶏肉や豚肉を加えてさらに煮込む。最低10時間は煮込まなければならないし、その間水を足し続けなければいけないので、手間と時間がかかる。

アワビが上質であれば、味付けは特に必要ない。味付けにオイスターソースを使うレストランもあるが、それはアワビの質が悪いか、煮込む手間を省いているかだ。アワビにかけるソースは煮込む時に出たスープを使う。余計な味付けは一切いらない。独特な粘りと、決して硬くはないコリコリとした絶妙な歯ごたえを思う存分に楽しめる。食感は餅に似ているが、粘りはそこまで強くない。アワビはタンパク質が豊富で滋養効果があるため、医食同源の広東料理にはなくてはならない存在である。
若い頃は、しっかりとした食感がある吉品が好きだったが、今は柔らかい禾麻の方が好きになった。ウィスキーと共に食べるのが一番おいしいと僕は思っている。
■取材協力
新同楽魚翅酒家
Sun Tung Lok Chinese Cuisine
住所:11 Yuk Sau Street, Happy Valley, HK
住所(中国語):香港跑馬地毓秀街11号
電話番号:2891-9698

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2007-10-05

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