FOODYの食べ歩きシリーズ第8弾-盆菜

FOODYの食べ歩きシリーズ第8弾

こんにちは、フーディーです。皆さんご存知のように明日は旧暦の大晦日。旧正月は中国人にとってはとても大切な行事というのは、毎日ナビの記事を読んでいる読者の皆さんはもうご存知だね。今日は旧正月にちなんで、新界に古くから住んでいた住民たちの間で受け継がれている変わった正月料理「盆菜」を皆さんにご紹介したい。香港人に限らず中国人は正月など祝い事があると、親戚一同が全員集まる。集まった家族をもてなすためには大量の料理を用意しなければいけないんだ。しかし最近の香港人は忙しく、なかなか手の凝った正月料理を作ることはできない。そこで、近年香港で流行っているのが「盆菜」。この手軽さと豪華さが受けて、近年新界だけでなく香港島や九龍のレストランでも提供するようになったんだ。最近ではファーストフードレストランでも食べられるようにまでなった。今日は数ある盆菜を出すレストランの中でも、特に昔からの調理法と食材にこだわる老舗レストラン、龍華酒店の「盆菜」をご紹介したい。

ブルース・り一映画のロケにも使用された

60年近い歴史を誇る龍華酒店。名前に「酒店」とつくからホテルと勘違いする人もいるようだ。昔は本当にホテルだった時代もあるんだが、今ではれっきとしたレストランなんだ。この店では、電話1本で香港中どこへでも盆菜を配達もしてくれる。おっと、ひとつ忘れていた。ここはかの有名なブルース・リーの映画「唐山大兄」のロケ地になったことでも有名なんだよ。ブルース・リーファンにはたまらないレストランとも言える。それでは、お待ちかねの盆菜をご紹介しよう。

「盆菜」とは

もともと盆菜とは客家料理のひとつだった。婚礼などめでたいことがあると、村中の人々を招き、多いときでは100人以上を招いて宴会をしたそうだ。宴会時に主人と来賓者は「九大簋」という9つの高級食材で作った料理を食べ、余った食材に他の食材を盛り合わせたものが、「盆菜」と呼ばれ、もともとは使用人のまかない料理だったそうだ。その他にも盆菜の由来はいろいろあって、一番有名な話が600年ほど前に中国南宋の幼い皇帝が元軍に追われ香港の新界まで逃げて来た時、突然訪れた皇帝を村人たちがもてなすため、あらゆる高級食材や珍味を盛り合わせて差し出したという話だ。盆菜に使用する器は、中国語で「大きなどんぶり」を意味する「盆」。現在は調理しやすいように土鍋を使用することが多い。

18種類の食材が詰め込まれた豪華な盆菜

では盆菜の中身を見てみよう。龍華酒店では中国人にとって縁起のよい番号とされる「18」という数字から、18種類の食材を盛り合わせている。中に入れる食材はその日の仕入れの状況によって少しずつ変わるんだ。食材は変わっても一般的に盆菜は3つの層からできている。一番上の層はご覧の通り、アワビ、ナマコ、シイタケ、花膠(魚の胃袋)、魚のすり身団子、鶏肉、車えび、豚ロースト、鹿のアキレス腱、ガチョウのローストなど中国料理の食材の中でも高級で人気のあるものを並べている。この鶏肉だが、通常料理で使われるものより、少し皮が黄色っぽく見える。これは「清遠三黄鶏」という種類の鶏で、「黄毛黄咀黄脚(毛、クチバシ、足すべて黄色)」なんだ。これは、一般的な鶏に比べて味が濃厚で、肉も弾力がある。真ん中の層は、イカ、豆腐、髪菜(藻の一種)、豚の皮、乾燥牡蠣などが入っている。一番下の層には、野菜や水分を吸収する大根や枝竹(乾燥枝ゆば)、白菜などが入っている。食べるときはまず、一番下からかき出して食べるんだ。ご覧の通り、どの食材も艶やかである。
HK$488で5~6人分。一人平均HK$100ほど。アワビやナマコなど高級食材が入っていることを考えるととてもリーズナブル。

HK$488で5~6人分。一人平均HK$100ほど。アワビやナマコなど高級食材が入っていることを考えるととてもリーズナブル。

鹿のアキレス腱。食べると足が強くなると言われている。冬に食べると体が温まるんだ。

鹿のアキレス腱。食べると足が強くなると言われている。冬に食べると体が温まるんだ。

まるごとのナマコは気持ち悪いが、薄くスライスされると抵抗感はなくなる。コラーゲンもたっぷり含まれているし、この食感が好きだという人も多い。

まるごとのナマコは気持ち悪いが、薄くスライスされると抵抗感はなくなる。コラーゲンもたっぷり含まれているし、この食感が好きだという人も多い。

魚の浮き袋。これは中国の滋養スープによく使用される食材。こちらもコラーゲンがたくさん含まれ、肌を美しくしてくれる。

魚の浮き袋。これは中国の滋養スープによく使用される食材。こちらもコラーゲンがたくさん含まれ、肌を美しくしてくれる。

豚肉ロースト。中国の祭礼には必ず子豚の丸焼きを用意する。皮がカリッと香ばしく、肉は柔らかくてとってもジューシーだ。

豚肉ロースト。中国の祭礼には必ず子豚の丸焼きを用意する。皮がカリッと香ばしく、肉は柔らかくてとってもジューシーだ。

ガチョウのロースト。他の料理の水分をよく吸収し、味が閉じ込められている。見るだけで食欲がそそられる。

ガチョウのロースト。他の料理の水分をよく吸収し、味が閉じ込められている。見るだけで食欲がそそられる。

盆菜を食べるときに注意したいこと

たまに火がしっかりと通っていない盆菜を食べて食中毒が出ることがある。レストランで食べるなら問題ないが、レストランから配達をしてもらった場合は、食べる前にしっかりと火を通すこと。特に豆腐とシイタケにちゃんと熱が通っていないと危険なので特に注意するように。また、上から下まで食材がぎっしりと詰まっていて、小サイズでもかなりの量なので、あまり大きなものを注文しないようにしたい。
今回取材協力していただいたこの龍華酒店は、沙田の少し外れたところにあるが、わざわざここまで足を伸ばしてくる人も多い。市街地では見ることのできない懐かしい居心地のよい雰囲気だから、常連客も多いんだ。ちなみにこのレストランは戦時中、旧日本軍によって占領されたこともある。香港の歴史に興味のある人にはぜひ訪れてもらいたいレストランのひとつである。それでは、皆さんハッピーニューイヤー!
ロケが行われた大廳。

ロケが行われた大廳。

旧日本軍による占領時に、馬小屋として使用されていた部屋。

旧日本軍による占領時に、馬小屋として使用されていた部屋。

小HK$48(4-6人用)~

小HK$48(4-6人用)~

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2008-02-05

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