香港の家庭料理、滋養スープはおふくろの味。とうもろこし、にんじん、白きくらげ入りのポークボーンスープで夏バテ解消!
9月になっても暑さの衰えを知らない香港の夏。秋まであとひといきですが、日本人の私たちはそろそろ暑さに疲れを感じるころではないでしょうか?この半年は続く香港の夏、一体香港人はどうやって夏バテを防止しているのでしょう??
今日は香港人の健康を底から支えるそのヒミツのメニューをご紹介しましょう。郷に入れば郷に従え。その土地にはその土地で生きるために必要な食べ物が発達しているものです。今月は私たち日本人の身体も優しく労わってくれる栄養たっぷりなスープをご紹介します。
香港の家庭料理でもっとも重要なポジションにあるのがこの“煲湯”と呼ばれるスープの存在です。“煲湯”の“煲”は長く火にかけて煮込むという意味があります。“湯”は広東語ではスープを意味します。広東料理のスープには調理方法や時間などでスープでも呼び名がそれぞれ異なるのです。レストランでメニューを解読する時などに便利ですから、ぜひ覚えてくださいね。
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この“煲湯”は、家庭だけではなく、庶民的なレストラン“茶餐廳”から高級レストランに至るまで、毎日日替わりで作られている香港人の食生活になくてはならないとても大切なものです。現代の香港女性はあまりお料理をする人が少ないのですが、この“煲湯”だけは自分で作るという女性もいるほどです。香港人の友人に“あなたのお母さんが作る料理で何が一番好き?”と聞くと、多くの人がこの“煲湯”と答えるのです。この“煲湯”はまさに香港版、おふくろの味。香港人が一番愛しく思い、ずっと飲み続けたいと思う愛情たっぷりのスープなのです。香港人の男性とデート中の方、これから結婚を考えているという方、ぜひ、彼にこの“煲湯”を作ってあげてみてください。きっときっと喜ぶと思いますよ。
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香港にはお母さんに代わって“煲湯”を作って販売するというビジネスもあります。また店舗を持たずに、事前予約でこの“煲湯”をデリバリーするというサービスまであるんですよ。香港人にどれだけこの“煲湯”が愛されているかわかりますね!
煲湯が買えるショップ
健康工房
原味家作
健康快線(福堂グループ)
レストランで上品な煲湯を飲むなら・・・
西苑酒家がおすすめ!
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この“煲湯”は、実にたくさんのレシピがあります。365日、毎日違うスープを作っても、何年分ものレシピがまだあるほど、食材の組み合わせによっていくつものスープが出来上がるのです。通常、香港のお母さんたちは、家族や子供たちの身体や健康具合を見て、その状態にあった漢方薬材と、季節にあった食材を組み合わせて、スープ作りをします。飲む薬ともいえるし、医食同源の思想、予防医学の実践とも言えるのがこの“煲湯”です。香港の人たちは、身体のため、滋養のためにこの“煲湯”を毎日毎日飲むのです。
しかし、実はこの“煲湯”の習慣は、中国広しと言えども、広東だけにある習慣で、北京や上海、四川などには存在しないのです。広東の人は中国のどの地方よりももっとも漢方的な食生活を送っていると言われています。そういえば、香港に薬膳専門のレストランがないのはなぜだと思いますか?それは香港の食べ物がもうすでに薬膳の思想で作られているからなのです。
私たち日本人が“薬膳スープ”と聞くと、「えー苦そう、まずそう、飲みたくない」という気分になるかもしれませんね。どうしても薬膳という名がつくと、食欲が減退してしまいます。実は私もそうです。でも、ご安心を!これだけ食に貪欲な香港人が身体にいいという理由でまずいものを毎日、口にするわけがない!この“煲湯”はグルメな香港人が愛するスープだけに、本当に美味しいスープに仕上げられています。調味は塩だけ、それ以外は何も加えません。素材の味がすべて溶け出したその味わいは、とても繊細で、奥深く、スープの栄養が身体に染み入るような優しい味。特に、今日ご紹介するこのスープは、数多くある“煲湯”の中でも、もっとも日本人に飲みやすく、作りやすく、食材も入りやすいものを選びました。和食にも合うスープですから、ぜひ作ってみてくださいね。
では、食材の説明から
粟米(とうもろこし) ただ茹でて食べるだけでもとっても甘い香港のとうもろこし。今日のスープには軸ごと入れるので、甘くて美味しいスープになります。
紅羅蔔(にんじん)
奥が西洋にんじん、手前が台湾産のにんじん。
スープに使うのは、手前の大きくてごっつい感じのにんじんを使います。香港ではにんじん嫌いの子供がいないと言われるのですが、それには理由があって、こちらのにんじんは非常に甘くて美味しいのです。これをスープに使うと、とーっても甘いスープになります。
雪耳(白きくらげ) 海草のようですが、きのこの一種です。たんぱく質や繊維を多く含み、身体を強め、肺を潤し、痰や咳を沈めるといわれています。香港では燕の巣に匹敵するコラーゲンを持つことから、特に女性の美容に人気のある食材です。肺にもいいので、タバコを吸う男性にもおすすめの食材です。
南北杏(あんにん) 薔薇科の植物。北杏は独特の香りを持ち、皮膚を潤し、光沢を与えてくれます。咳を鎮めたり、緩やかにしたり、胸のつまりを和らげます。南杏は甘く、豊富なたんぱく質、脂肪を含み栄養価が高いです。そう、杏仁豆腐に使われるものとしてお馴染みですね。普通は南杏と北杏は9:1くらいの割合で使います。
西施骨(豚骨付肩肉)
スープを取った後の肉も柔らかく味があって美味しくいただけるので、スープ用の部位として人気があります。骨付きなので、スープにたっぷりのコラーゲンが溶け出し、滑らかな口当たりになって、ますます美味しいスープが出来ます。
それでは作ってみよう!
材料
** 作りやすい分量(6-8人分)
とうもろこし 1本
西施骨 600g
にんじん 1本
水 カップ15杯
白きくらげ 1玉
塩 味をみて
南北杏 40gぐらい
作り方
1. まず材料の下準備から
とうもろこしは輪切りにします。
南北杏 キレイに洗った後、10分ほど水につけておきます。
西施骨 まず流水で肉の血合いなどをキレイに洗い流します。沸騰した湯に入れ一度茹でこぼします。再び沸騰して灰汁が充分出たら、汁ごと取り出し、流水で灰汁をキレイに洗い流します。 ** 香港ではスープを煮ながら灰汁取りをしないので、予め、肉の表面を茹でて灰汁取りをしてからスープ作りに入ります。これで澄んだクリアスープが作れます。
2. スープを煮るための深めの大きな鍋に湯を沸騰させます。そこへ、
3. 沸騰したら、常に材料が鍋の中で踊っている状態の火加減に調整し、そのまま蓋をして2時間から3時間ほど加熱してゆきます。
このスープなら誰にでも簡単に作ることができそうですね。煲湯はとても奥深いスープなので、豚肉の他、鶏や魚などでも作ります。材料も季節に応じた旬のものと組み合わせます。もっと漢方色の濃いスープもありますが、多くのスープは香港人が毎食事ごと飲んでいるくらい大変飲みやすいものばかりです。煲湯未体験の方も今度はぜひ、香港で煲湯を味わってみてくださいね!
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2007-09-14