新界歴史巡り~屏山文物徑~

歴史を学びながら香港を歩こう。天水圍駅の目の前がスタート地点、600年以上も昔にこの地に移り住んだ鄧一族が暮らす小さな集落。

こんにちは、香港ナビです。イギリスの植民地になる100年前まで、香港は小さな漁村だった、というのは皆さんご存知だと思います。観光で訪れる市街地には、ここ100年以内に建てられたイギリス式や近代的な建物があふれていますが、それ以前の香港はどこへ行ったら見ることはできるのでしょう?
MTR東鉄線や西鉄線を利用して市街地から30分ほど電車に乗ると、香港の郊外「新界(ニューテリトリー)」に行くことができます。新界には、1000年以上も前に中国大陸から移り住んできた「原居民」と呼ばれる人々が作った歴史的建造物が数多く残り、今でも伝統的な生活を垣間見ることができます。原居民が作ったいくつかの古い集落がありますが、今日はその中から旅行者でも行きやすい、元朗西部、天水圍(Tin Shui Wai)にある「屏山(Ping Shan)」をご紹介したいと思います。
市街地と比べると緑も多いのですが、市街地からのアクセスもよくベッドタウンとして近年発展しているため、都市部と同じような高層マンションが立ち並んでいるのも新界の不思議なところ。 市街地と比べると緑も多いのですが、市街地からのアクセスもよくベッドタウンとして近年発展しているため、都市部と同じような高層マンションが立ち並んでいるのも新界の不思議なところ。

市街地と比べると緑も多いのですが、市街地からのアクセスもよくベッドタウンとして近年発展しているため、都市部と同じような高層マンションが立ち並んでいるのも新界の不思議なところ。

天水圍駅前に広がる屏山

屏山は元朗西部、MTR西鉄線天水圍駅の南西部に位置し、香港でもっとも古い集落のひとつで、灰沙囲、上璋圍、橋頭圍、坑尾、坑頭、塘坊、新村の三圍六村から成り立っています。この集落は600年もの歴史があり、住民の多くは鄧(Tang)姓です。彼らは12世紀ごろに同じく元朗の東部に広がる錦田から屏山に移り住んだと言われています。新界の古い集落の中でも、MTRの駅前にあり交通の便も良いため、旅行者でも比較的簡単に行くことができるこの屏山ですが、集落内に点在する歴史的建造物を効率よく回るための屏山文物徑(ピンサン・ヘリテイジ・トレイル)が1993年に政府によって整備され、各建造物には歴史的背景を解説する案内板(英語・広東語)やマップも用意され、さらに便利になりました。
なんだか懐かしい屏山の街並み なんだか懐かしい屏山の街並み なんだか懐かしい屏山の街並み

なんだか懐かしい屏山の街並み

トレイルの中心には清潔なトイレも完備されています

屏山文物徑に沿って歩いてみよう

屏山文物徑(ピンサン・ヘリテイジ・トレイル)には10個の歴史的建造物が点在し、それらの歴史、また集落の歴史をわかりやすく展示した屏山鄧族文物館もあります。非常にコンパクトにまとまった集落なので、一つひとつをじっくりと見学しても、2時間もあれば十分に歩いて回ることができますよ。おすすめは市街地からアクセスしやすい、MTR西鉄線天水圍駅から出発して、文物館を終点にするルート。文物館を見学した後は、軽鉄屏山駅から軽鉄に乗って、元朗市内に出て、元朗のローカルグルメを楽しむというコースもおすすめです。それでは、トレイルを歩いてみましょう!
駅を出るとすぐに見える聚星樓

駅を出るとすぐに見える聚星樓

MTR西鉄線天水圍駅に降り立って駅構内から外を見ると、一方が高層マンションが立ち並ぶ住宅地が、もう一方が低層住宅や空き地が広がる古い集落が広がり、集落の入口にポツンと佇む三重の石造りの塔が見えます。屏山歩きのスタート地点はここの聚星樓です。

聚星樓(法定古跡)
聚星樓は、またの名を魁星塔、文塔といい、香港に現存する塔の中でももっとも古い塔といわれています。六角形の青レンガ作り、高さは約13メートルの聚星樓は、鄧族第七代世祖の鄧通彦が一族の子弟たちの科挙(中国の官僚登用試験)合格を祈願し、風水がよいこの地に建立しました。そのため、今でも受験シーズンになると合格祈願のために多くの学生が訪れるそうです。一般公開は1階部分のみで、2階と3階は非公開です。3階には科挙にトップの成績で合格した魁星という人を奉っています。
低層住宅が点在する集落の入口にそびえ立つ古塔。1階部分には小さな神棚があります 低層住宅が点在する集落の入口にそびえ立つ古塔。1階部分には小さな神棚があります

低層住宅が点在する集落の入口にそびえ立つ古塔。1階部分には小さな神棚があります

開放時間:9:00~13:00、14:00~17:00
定休日:毎週火曜日、1月1日、旧正月三が日、12月25日、26日
聚星樓の次、上璋圍へは斜め前にある空き地を通り抜けて行きます
集落を囲む塀は昔はすべて青レンガで組まれていましたが、今は入口の門楼や中にある神棚、古い家屋の外壁を残すのみです。

集落を囲む塀は昔はすべて青レンガで組まれていましたが、今は入口の門楼や中にある神棚、古い家屋の外壁を残すのみです。

上璋圍
聚星樓から集落に入って最初にあるのが、この上璋圍です。屏山坑頭村の鄧族が作ったもので、200年余りの歴史があります。レンガで囲まれた居住区の中には、今も多くの人々が住んでいます。整然と配列された家屋、門楼や神社など古い建物が保存されていますが、個人の敷地のため観光客は中に入ることができません。
開放時間:非公開

楊侯古廟
緩やかな坂を上った小高い丘の上にある楊侯古廟は、屏山坑頭村に位置し、元朗にある6つの諸侯を奉る廟のひとつです。この廟で奉られている楊侯というのが誰を指すのかは定かではありませんが、南宋末期の忠臣楊亮節だとする説がこの地では有力です。廟の3つの部屋には、それぞれ侯王・土地・金花娘娘が奉られています。
開放時間:常時
遠くから見ると農家の納屋のようなこぢんまりとした廟

古井
楊侯古廟に続く小高い丘のふもとにある古い井戸です。いつごろ作られたのかはっきりとした記録は残っていませんが、村人によると200年前には既にあったとのこと。この井戸は長年、坑頭村と上璋圍の両住人の大切な水源でした。今は封鎖され、水草が茂る井戸が不気味な口を開いています。
開放時間:常時
今もなお水をたっぷりとたたえている井戸。怖い… 今もなお水をたっぷりとたたえている井戸。怖い…

今もなお水をたっぷりとたたえている井戸。怖い…


愈喬二公祠と並んで一際目を引く大きな建物

愈喬二公祠と並んで一際目を引く大きな建物

鄧氏宗祠(法定古跡)
屏山の鄧一族の祖先を奉っているのが、この鄧氏宗祠。鄧氏の家系譜によると1550年に建立されたと記録が残っているそうです。三進両院式(三つの部屋と二つの中庭から成り立つ建物)で、香港内に残る三進両院式の建造物の中ではもっとも壮大な規模を誇ります。正門の両側に鼓台があり、そこに建つ二つの柱で屋根を支えています。建物内の梁の上には色鮮やかな彫刻や縁起がよいとされる動物たちが多数描かれ、中国の伝統的芸術を見ることができます。現在もこの建物は鄧氏の集会、祭事などで使用されているそうです。

開放時間:9:00~13:00、14:00~17:00
定休日:旧正月三が日

愈喬二公祠(法定古跡)
鄧氏宗祠の隣にあり、坑頭村と坑尾村のほぼ中間に位置します。この二公祠は、16世紀に鄧氏第十一代世祖、鄧世賢とその弟、世昭により建立されました。古来より集落内の師弟を教育する学校として利用され、1931~1961年の30年間は「達徳学校」という学校がこの建物を使用していました。正門の石額によると、建物は1875~1908年に大規模な修復が行われたそうです。

開放時間:9:00~13:00、14:00~17:00
定休日:旧正月三が日
窓には美しい細工が施され、精巧な構造を残す建物 窓には美しい細工が施され、精巧な構造を残す建物 窓には美しい細工が施され、精巧な構造を残す建物

窓には美しい細工が施され、精巧な構造を残す建物


覲廷書室
坑尾村に位置する覲廷書室は、鄧氏第二十二代世祖の香泉公が父、覲延公を記念するために建立しました。覲延公は1837年に科挙に合格した非常に優秀な人物だったそうです。覲廷書室は1870年に完成し、科挙を目指す子供たちの私塾として、また1904年に科挙制度が廃止された後も、第二次世界大戦後まで集落の子供たちの学習の場として使用されました。建物は二進式建築で、中央には中庭があります。建物は美しい青レンガで作られ、随所に美しい内装と色彩豊かな彫刻が施されています。屋根の部分には、桃の花や、すももの絵がありますが、これは「満門桃李(門下から優れた人材を多く輩出する)」という願いを描いたものだそうです。以前は非公開でしたが、近年一般公開を開始しました。

開放時間:9:00~13:00、14:00~17:00
定休日:旧正月三が日
青レンガと花崗岩で作られた色彩豊かな建物。至るところで緻密な彫刻が見られます 青レンガと花崗岩で作られた色彩豊かな建物。至るところで緻密な彫刻が見られます 青レンガと花崗岩で作られた色彩豊かな建物。至るところで緻密な彫刻が見られます

青レンガと花崗岩で作られた色彩豊かな建物。至るところで緻密な彫刻が見られます

覲廷書室から隣の清暑軒に通じる通路 覲廷書室から隣の清暑軒に通じる通路

覲廷書室から隣の清暑軒に通じる通路


清暑軒
覲廷書室に隣接する清暑軒は書室とほぼ同時期、1980年ごろに建てられ、宿泊施設、休憩場所など外部からの訪問客を迎える場所として使用されました。建物内の装飾は非常に美しく、木の彫刻や壁画、漏窓(透かし窓)などの細工が随所に見られ、屏山文物徑に点在する建造物の中でも、その美しさは群を抜いてます。ちなみに、清暑軒という名称は元は建物の1階にある部屋のひとつの名前で、建物全体を指すものではなかったそうです。以前は非公開でしたが、近年一般公開を開始しました。

開放時間:9:00~13:00、14:00~17:00
定休日:旧正月三が日
中庭を囲むように建てられた二階建ての建築。歴史を感じさせる2階へとつながる階段 中庭を囲むように建てられた二階建ての建築。歴史を感じさせる2階へとつながる階段

中庭を囲むように建てられた二階建ての建築。歴史を感じさせる2階へとつながる階段

宿泊施設だったため、映画に出てくるような古い台所がありました 宿泊施設だったため、映画に出てくるような古い台所がありました 宿泊施設だったため、映画に出てくるような古い台所がありました

宿泊施設だったため、映画に出てくるような古い台所がありました

お風呂場もちゃんとあります お風呂場もちゃんとあります

お風呂場もちゃんとあります


洪聖宮
坑尾村公園に隣接する洪聖宮は1767年に建てられ、増築、改築を繰り返し、現在の姿になっています。言い伝えによると、洪聖とは唐代の有名な刺史(官職名のひとつ)洪熙のことで、特に漁師など海に携わる人々から厚く信仰されている歴史上の人物だそうです。香港の一般的なお寺の中庭には屋根があるのに対して、この洪聖宮には屋根がない開放的な設計となっており、通気と採光に配慮した、この寺独特の様式となっています。

開放時間:常時
坑尾村公園でちょっと休憩 坑尾村公園でちょっと休憩

坑尾村公園でちょっと休憩


屏山の歴史が一目で分かる資料館-屏山鄧族文物館 暨文物徑訪客中心
トレイル沿いにある歴史的建造物を見学した後は、資料館に行ってみましょう。洪聖宮からは歩いて約15分ほど、しかも屏山、元朗を見渡すことができる小高い丘の上に建っています。1899年に建てられた屏山警察署を改築した、なかなか見ごたえのある資料館ですので、ぜひ最後の力を振り絞って行ってみて下さい。
洪聖宮を出て、案内標識に沿って歩いきます 洪聖宮を出て、案内標識に沿って歩いきます 洪聖宮を出て、案内標識に沿って歩いきます

洪聖宮を出て、案内標識に沿って歩いきます

この地に残る鄧一族によって集められた資料館には、鄧一族により長年保存されていた歴史的価値のある展示品が多く含まれています この地に残る鄧一族によって集められた資料館には、鄧一族により長年保存されていた歴史的価値のある展示品が多く含まれています この地に残る鄧一族によって集められた資料館には、鄧一族により長年保存されていた歴史的価値のある展示品が多く含まれています

この地に残る鄧一族によって集められた資料館には、鄧一族により長年保存されていた歴史的価値のある展示品が多く含まれています

ビデオを使用し屏山の歴史を語り継いでいます ビデオを使用し屏山の歴史を語り継いでいます

ビデオを使用し屏山の歴史を語り継いでいます

資料館の裏手には元朗を見渡すことができる休憩所があります。眼下にはまるでトーチカのような亀甲墓が広がります。 資料館の裏手には元朗を見渡すことができる休憩所があります。眼下にはまるでトーチカのような亀甲墓が広がります。 資料館の裏手には元朗を見渡すことができる休憩所があります。眼下にはまるでトーチカのような亀甲墓が広がります。

資料館の裏手には元朗を見渡すことができる休憩所があります。眼下にはまるでトーチカのような亀甲墓が広がります。


いかがでしたか?香港にも古い中国文化を今に残す集落が残っているんです。皆さんもカメラ片手に華やかな都会から足を伸ばして、香港の古い町並みを歩いてみませんか?以上、香港ナビがお伝えしました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-02-13

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