大澳のんびり歩き

「東洋のヴェネチア」と呼ばれるランタオ島の小さな漁港「大澳(Tai O)」を歩こう。山と海と水上家屋、どこか懐かしい街並み。

こんにちは、香港ナビです。高層ビルや商業ビルが立ち並び、バスや地下鉄の路線網は市街地の隅々まで張り巡らされ、アジア有数のメトロポリタンのひとつ、香港。今ではコンクリートで固められた無機質な街並みですが、100年ほど前までは小さな漁村だったんです。今日ご紹介する「大澳(Tai O)」は、時代の流れに取り残されたような、ゆったりとした時間が流れる街。近代化と共に香港が失ったものが、まだこの街には残っています。重い荷物はホテルに預けて、カメラ一つ持って、気の向くままに歩いてみましょう。

ランタオ島西部に位置する小さな漁港

香港国際空港があるランタオ島の西部に位置する大澳。これだけ交通が発達している香港にも関わらず、大澳と市街地を結ぶのはバスとフェリーのみです。香港島からは、セントラルからまずフェリーでランタオ島東南部にある「梅窩(Mui Wo)」へ行き、そこからバスに乗り換え終点で下車します。九龍半島からは、東涌からバスで行く方法が一般的。今回ナビはMTRで東涌駅へ行き、そこからバスで大澳を目指しました。

出発前に必ずバスやフェリーのスケジュールを確認
香港で生活していると「時刻表」の存在を忘れてしまいます。バスでも地下鉄でもトラムでも、始発と最終が書かれているだけで、日本のような正確な時刻表というものがほとんどありません。なかったらないで、慣れてしまえばそのアバウトさが逆に楽だったりもするのですが、離島に行くときは必ず時刻表をチェックが必要です。市街地と違って、バスやフェリーが1時間に1本しかない、なんてこともよくあります。かくいうナビも東涌から大澳行きのバスの時刻表を調べて行かなかったために、バス停で30分近く待つ羽目に。ナビは平日のお昼に行きましたが、週末になると大澳行きの交通機関は大変混雑します。バスの運賃も平日はHK$11.50なのに、日祝はHK$19.20に変わってしまうのです。

【各交通機関のスケジュール】
■中環-梅窩
新世界第一渡輪(ニューワールドフェリー)

■屯門-東涌-沙螺湾-大澳
富裕小輪(フォーチュンフェリー)

■梅窩-大澳/東涌-大澳
大嶼山バス
MTR東涌駅B出口から出ます。薄暗いバスターミナルを通り抜けると、離島行きバスのターミナルがあります。 MTR東涌駅B出口から出ます。薄暗いバスターミナルを通り抜けると、離島行きバスのターミナルがあります。 MTR東涌駅B出口から出ます。薄暗いバスターミナルを通り抜けると、離島行きバスのターミナルがあります。

MTR東涌駅B出口から出ます。薄暗いバスターミナルを通り抜けると、離島行きバスのターミナルがあります。

ターミナルの一番奥、緑の看板に「11 大澳」と書かれているバス停。隣はゴンピン行きのバス停。 ターミナルの一番奥、緑の看板に「11 大澳」と書かれているバス停。隣はゴンピン行きのバス停。 ターミナルの一番奥、緑の看板に「11 大澳」と書かれているバス停。隣はゴンピン行きのバス停。

ターミナルの一番奥、緑の看板に「11 大澳」と書かれているバス停。隣はゴンピン行きのバス停。

のんびり、ゆっくりバスは行く

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東涌の超高層マンションに別れを告げ、バスはゆっくりと山道を上って行きます。乗車時間は約1時間。バスの乗客は平日にも関わらず、住民の数はわずかで、大半が大澳を目指す観光客のようです。香港では珍しいスローライフな生活を垣間見れるというだけあって、外国人観光客もちらほら。

狭い山道の両脇には、まるで東南アジアの田舎にやってきたかのような錯覚を覚える景色が広がります。椰子の木やバナナの木、香港が亜熱帯の街ということを改めて思い知らされる路線です。山を抜けて、海岸線に沿ってさらにバスは進みます。美しい砂浜があったり、小さな集落があったり、シャッターチャンスがいっぱいで、バスの中では少し眠ろうかと思っていたのですが、結局一睡もできず・・・。
山を抜けて沼地のような川が見えてきたら終点です。 山を抜けて沼地のような川が見えてきたら終点です。 山を抜けて沼地のような川が見えてきたら終点です。

山を抜けて沼地のような川が見えてきたら終点です。

1時間のバスの旅も終了しました。さあ、大澳の街に歩き出しましょう。まずは、バス停で必ず帰りのバスの時刻をチェックしましょう。大澳は端から端までゆっくり歩いても30分ほどの小さな漁村なので、観光には2~3時間もあれば十分です。
大澳は、大きく3つのエリアに分かれています。3つのエリアは海で隔たれていて、それぞれを小さな橋がつないでいます。この橋ができるまでは、各エリアを行き来するには小さなサンパン船を利用していたそうです。

大澳郷事委員会歴史文化室

バス停を出て、永安街の入り口に「大澳郷事委員会歴史文化室」という小さな博物館があります。手作り感いっぱいのシンプルな展示室には、住民から寄贈された古い祭事品、生活用品のほか、大澳の歴史や産業を簡単に説明した展示品が並んでいます。
昔の大澳の写真 昔の大澳の写真

昔の大澳の写真

ピンクドルフィンウォッチングに飛び入り参加

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バス停のすぐ側に、ドルフィンウォッチボートツアーのポスターが貼られ、その前でおばちゃんがチケットを売っていました。値段を見るとたったのHK$20。ツアー時間は20分ほどですが、ここからボートで沖に出てドルフィンウォッチングをした後、ボート上から水上家屋を見学できるということ。お値段も安いし天気も良いのでナビも早速参加してみました。
定員10人ほどの小さなボートに乗り込むと、すぐに出発です。出発時間は特に決まっていないようで、人が集まれば出発、という感じ。船頭さんがエンジンをかけるとボートはすごい勢いで加速し、あっという間に大きな海へと飛び出しました。ナビが参加した日は雲ひとつない晴天、ボートを駆け抜ける海風が気持ちいいし、気分は最高!!
途中で、大澳の名所のひとつ「将軍石」を海上から見学。この岩は横から見ると中国の武将が岩壁にもたれて一休みしているように見えることから、その名前がつけられました。船頭さんはこの岩の近くで減速してくれ、この不思議な岩をしばし見学。
沖に出てすぐに、船頭さんが「あそこにイルカがいる!」と指差し、その方向を見ると肌色のイルカが1頭水面から姿を現しました。たった数秒しか水面に出てこなかったので、残念ながらカメラに姿を収めることはできませんでした・・・。気を取り直して次の出現を待ちます。船頭さんは、経験を頼りにゆっくりとボートを動かしながらイルカが見れそうなスポットを探します。が、結局もう一度イルカを見ることはできませんでした。ちなみにイルカを一度も見ることができないとしても返金はありません。運がよければ何度も見れるし、悪ければ・・・。ちなみに、この辺りに生息するイルカは「中華白海豚(シナウスイロイルカ)」と呼ばれ、成体は全身がピンク色になるために、ピンクドルフィンという愛称でも知られています。近年、海洋汚染や過度な埋め立て工事のために生息域が狭くなり、数もどんどん減っているそうですよ。
後ろ髪を引っ張られるような思いで海を後にして、船を走らせること約5分、水上家屋がひしめき合う風景が目の前に広がります。
水上家屋は「棚屋」と呼ばれ、すべて漁師たちの住居です。1棟あたり数十本の木に支えられた高床式の棚屋に住む人々は、観光客が水上から彼らの生活にカメラを向けられることに慣れているのか、気にする様子もなく淡々と日々の生活を送っています。軒先で麻雀を楽しむお婆ちゃんたち、おしゃべりに花を咲かせるおばちゃんたち、椅子に座って観光客を眺めているお爺ちゃんたち・・・、住民の皆さんの日常生活をボートに乗って垣間見るなんて、なんとも不思議な気分です。
何十回も改築、増築を繰り返したような複雑な形のもの、誰も住む人がいなくなったのか、木が腐り崩れ落ちてしまったもの、2000年の火災のあと新しく立て直したブリキのロボットのようなものと、棚屋の種類も様々。背後の緑の山、抜けるような空の青色、両脇に密集する水上家屋、街の中心を貫く川、たぶんこの街は香港の中で一番自然の近くにある街。山の側に海がある街は本当に美しいなぁ、とナビも感動してしまいました。

小さな街を散策

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■永安街~吉慶街、吉慶後街界隈

船を下りたら、今度は隅々まで町を探索してみましょう。観光のスタートは、バスターミナルから歩いて一番最初にある永安街。大澳名物の海産物を並べた商店が軒を連ねています。珍しい魚の浮き袋の乾物や独特な臭いを放つ蝦のペースト、干し蝦など、不思議なものがたくさん。せっかくだから何か買ってみたいのですが、どれも調理方法がよくわからないものばかり・・・。
永安街を歩いていくと、小さな橋がありました。この「大澳涌行人橋」は1996年に完成した大澳でも一番新しい橋で、渡ったところが町のメインストリート街市街です。ここにも海産物を売るお店が並び、この通りから横に伸びる吉慶街、吉慶後街にも小さな商店がぽつぽつとあります。
スルメの香ばしい匂いに誘われて、思わず買って食べてしまいました。一袋HK$10。
スルメの香ばしい匂いに誘われて、思わず買って食べてしまいました。一袋HK$10。
スルメの香ばしい匂いに誘われて、思わず買って食べてしまいました。一袋HK$10。

スルメの香ばしい匂いに誘われて、思わず買って食べてしまいました。一袋HK$10。

■新基街
観光客が歩くストリートというと、これくらい。ナビは吉慶街をずんずん奥まで進み、「新基大橋」を渡り、新基街に行ってみました。新基街は住宅が並ぶ静かな通りで、お店もほとんどありません。ただ、この辺りからは背後にそびえる山とその麓のマングローブの美しいコントラストを楽しむことができます。

■関帝廟~警察署跡地

新基街を探索した後は、また街市街近辺に戻り、今度は逆方向の警察署跡地やシティホールがある方向へ歩いてみましょう。公衆トイレもこの道の途中にあります。特に見るものはないのですが、子供たちが道の真ん中でボール遊びをしていたり、お婆ちゃんが軒先で魚をさばいていたり、ぽかぽか陽気の下、ゆっくり散策するにはもってこいの道です。
500年以上の歴史がある関帝廟。

500年以上の歴史がある関帝廟。

1736年に建立された洪聖廟。

1736年に建立された洪聖廟。

帰りはフェリーで東涌へ

大澳の夜は早く、6時前になると個人商店は次々と店仕舞いを始めます。さあ、3時間歩き続けてほどよく疲れも出てきたので、そろそろ家路に着きましょう。

帰りはバスではなく、フェリーで東涌へ戻ることもできます。所要時間はたったの30分。船の本数は少ないので、バスで帰るときと同様に前もって時刻表をチェックしておきましょう。ナビは今回、フェリーを使用してみました。フェリーは最初に乗ったドルフィンウォッチングのボートが通ったラインと同じ海域を通って、一路香港国際空港方面へ。途中、空港のすぐ側を通るため、海の上から飛行機の離着陸を見ることができます。東涌の船着場から東涌駅までは徒歩で10分ほど。帰りは、シティゲートアウトレットでショッピングもよいですね。
いかがでしたか?市街地とはまったく違う香港の素顔を垣間見たような大澳歩き。観光で香港に訪れた方はもちろん、香港在住の方にもぜひオススメしたい街です。以上、香港ナビがお伝えいたしました。
関連タグ:新界ランタオ島漁村イルカ

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-05-13

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