横浜中華街で感じる香港その13 中華街の守り神・關帝廟、媽祖廟

關聖帝君、媽祖を祀るふたつの廟。香港の人々の信仰を集める神様は横浜の街でも愛されていました。

こんにちは!香港ナビ勝手に横浜支局です! 香港を訪れた際に、中環(セントラル)の文武廟、浅水灣(レパルスベイ)の天后廟を訪れた方も多いかと思います。この2つの有名な廟の神様が、横浜中華街に祀られていることをご存じですか? 地元横浜中華街に住まう人々が熱心にお参りしている廟、関帝廟と媽祖廟です。ツアーなどに参加して中華街を巡ると訪れる率も高いのですが、個人でふらりと訪れると、つい食に感覚を奪われてスルーしてしまうかも。いやいや、でもそれではもったいない! どちらも外観も本殿内も匠の技を尽くした美しい廟、そして真摯にお祈りを捧げる地元の人々。建築物としての魅力と厚い信仰は香港も横浜中華街も共通しています。神様つながりで垣間見る横浜中華街、ご案内いたします!

横浜關帝廟

主神は、関聖帝君(かんせいていくん)。映画『レッドクリフ』により人気が再燃している三国志にも登場する武将で、蜀(蜀漢)の初代皇帝である劉備に仕えていた関羽。この関羽を神格化した呼び名が関聖帝君です。武勇の誉れが高かったことから、香港の文武廟では「武」の神様として祀られていますね。さらに関聖帝君は、そろばんを発明したとか、簿記の方法を編み出したという伝説もあるように理財にも精通し、さらに人同士のつきあいの上で大切な信義にも厚かったことから、商売繁盛の神様としても信仰を集めているのです。
その関聖帝君を祀る横浜關帝廟は、横浜開港に伴い欧米人の筆談通訳として来日したひとりの中国人が、1862年に母国からもちこんだ関羽の木造を祀る小さな廟を立てたのがはじまりと言われています。以来、華僑の人々をはじめとして異国に暮らす人々の心のよりどころとなってきました。
1891年には煉瓦造りの立派な廟が完成し、お参りに訪れる人の数も増えつづけていましたが、1923年の関東大震災により關帝廟は崩壊。さらに1945年の大空襲、1986年の不審火での全焼と苦難に襲われてしまいます。しかし、地域の厚い信仰と伝統を重んじる気持ちからそのたび再興され、1990年四代目横浜關帝廟として現在の荘厳な姿となったのでした。
この現横浜關帝廟建造の際、廟堂の基本構築や装飾はできる限りの材料を中国から取り寄せ中国の工匠により中国の伝統建築工芸を駆使して再建したそうです。
大きな目を見開いた狛獅子の親子に守られた關帝廟。廟堂前ではおめでたい四文字熟語が箔押しされたお線香から穏やかな煙が立ち上ります。廟堂内への参拝は、先に廟入り口にある受付で祈願のお線香を購入してから入り口へ向かってくださいね。


廟堂の屋根には龍や虎など動物たちの美しく勇ましい姿が見られます。……が、なぜかその真ん中にイカが! イカそのもの意味するところは不明なのですが、頭を下向きにしたイカには目を奪われずにはいられません。写真の中からイカを見つけることはできますか?





横浜中華街関帝廟
住所:横浜市中区山下町140番
電話:045-226-2636
開門時間:9:00~19:00

媽祖廟

媽祖廟

媽祖(まそ)、香港では天后(ティンハウ)と呼ばれる航海、漁業の守護神を祀っています。
媽祖は宋代に実在した林黙娘(りんもうにゃん)という名の娘が神となったものであるとされています。幼いころから才知に長け信仰心も厚く、16歳で神から教えと銅製の札を授けられ、その力で多くの人々の災いや病を癒しつづけたことから「通玄の霊女」と崇められるようになりました。その黙娘は28歳の9月9日に天に召されましたが、その後も、海上を見守るように舞い、難民を救助する姿などが見られたので、人々は廟を建てて祀り、それが媽祖廟、天后廟となり航海安全の守護神となったのです。
香港の市街地の天后は、埋め立てが進みずいぶんと内陸にあるものが多くなりましたが、有名な浅水湾(レパルスベイ)の天后廟は海沿いにその姿を留めています。また、マカオという名は、媽祖を祀る媽閣廟の広東語読み「まーこっみう」が由来しています。
横濱媽祖廟は、明治時代に現在の山下公園内にあった清国領事館施設内に天后宮が祀られていたという記録がはじまりとされる説があり、港町にふさわしい、現在のような媽祖廟となったのは2006年3月。たまたまマンション建設の話しが持ち上がった土地に関して、街づくりの観点から反対運動がおこり、その解決策として土地を買収して長年強く熱望されていた媽祖廟を建立することで、土地側近隣側を丸く収めたといいます。普通なら長くこじれそうな話も通玄の霊女の力により、穏やかな地を生み出したのでした。
8角形の廟堂の側面や柱にはひとつひとつ違う絵柄が彫り描かれています。滑らかな石と緻密な細工が荘厳な雰囲気を醸し出しています。狛獅子の毛並み一本一本もみごとに掘り出されているんですよ。
媽祖廟では祈願する際には、赤いリボンに名前を記して奉納処に結びつけます。これは、黙娘は天に召されたあとも、赤い衣装をまとって海の上を舞っていたことに由来し、風になびく赤いリボンなのだそうです。
横濱媽祖廟
住所:横浜市中区山下町136番地 
電話:045-681-0909
開門時間・9:00~19:00

文武廟、浅水湾の天后廟、MTR天后駅そばの天后廟など、何度となく訪れているはずなのに、その起源、神様についての詳細は知りませんでした。横浜中華街を知ることで香港にもまた一歩近づいた気がします。香港、横浜ともに、たちのぼるお線香の煙の向こうにはこんな話があるんだなぁと思いながら廟を訪れていただけるとうれしいです。以上、お線香の香りが大好きな香港ナビ勝手に横浜支局がお伝えしました!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-04-16

ページTOPへ▲

その他の記事を見る