横浜中華街で感じる香港、その2-炭火チャーシューの店『金陵』

香港出身の創業者、香港の職人。代々伝わる「香港の味」を家族で守り続ける金陵(きんりょう)の炭火焼きチャーシュー

こんにちは!香港ナビ勝手に横浜支局です。横浜中華街からお送りする第2弾は、炭火チャーシュー。香港の焼味店の店先に豪快につり下げられた叉焼、鶏、鴨の姿は、香港の日常の光景としてみなさん記憶されていると思います。そのリアルな香港焼味が目でも舌でも味わえるお店が横浜中華街にありました! 創業80年を越える老舗「金陵」。ひとつずつ手作りした焼味からしたたる蜜と脂に、香港好きなら誘われずにはいられないですよ~!

香港でも数少なくなってきた「炭火焼き」にこだわっています

一部高級店をのぞいて、香港の街でも焼味を本格炭火焼きで作るところは減少の一途をたどり、その多くがガス焼きに移行されてしまいました。しかしながら金陵は、創業者が伝えた昔ながらの炭火焼きにこだわり続けています。炭火独特の水分の少ない強い火力は、焼き色の美しさに加えて肉のジューシーさを閉じこめる力もあり、また、口に入れる瞬間にふんわりと香る炭火の香ばしさは食欲をそそります。しっかり「肉」なのに、後を引いて次々と口に運んでしまうおいしさは、じゅわっと広がる肉のうまみ、そして同時にかすめていく炭の香りによるところも多分にあるようです。使用している炭は「島根木炭」。備長炭に比べると火力が強く、素材のうまみを凝縮させる焼き上げに適しているものだそうです。

家族で守り続けている創業時からの味

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船乗りだった簡栄樹氏が香港から横浜へ移り住み、金陵を創業したのは1924年。関東大震災で横浜も復興に作業が続けられる最中でした。当時は香港の味を幅広く扱う中華料理の店で、本場の味が楽しめる人気店でした。その後、家に代々伝わるレシピで焼味を提供したところ口コミでその評判が広まり、一気に店の人気メニューとなったのでした。時代が変わり店舗が変わっても、香港の職人を呼び寄せて、再度スパイスや蜜の配合、焼き時間、火力などの検討をくり返し、「金陵の味」のレベルを保つ努力は続けられてきました。創業者が香港から伝えた味を守ることが、金陵が「炭火焼きチャーシューの店」として横浜中華街での不動の人気を築くことへ繋がっていったのでした。
焼味のみならず、豚足や豚の耳、またモツ類を丁寧に煮込んだ滷味も揃っています。もちろんこちらも店内厨房で全て手作りしています!

あたたかい又焼飯を2階のお食事スペースで!

持ち帰り用の販売カウンターしかないように見えますが、レジ正面にある階段を上ると、2階にはお食事スペースが設けられているんです。常連さんたちも「今日は何にしようかな~」と悩むほど、どれも捨てがたいラインナップですが、その中から人気の3品をご紹介します。

チャーシューとアヒル丼
じっくり炭火で焼かれた名物のチャーシューと、表面をパリパリに焼き上げたアヒル肉のスライスがたっぷりのっています。それぞれの肉を箸で横につかんで軽く押してみてください。じわーっと表面から澄んだ脂とうまみがにじみ出してくるのがわかりますよ! チャーシューは水飴をベースにしたオリジナルの蜜を丁寧に塗り重ねて焼きあげています。蜜=甘い、と思ってしまいがちですが、金陵の蜜はべたつきのないさらりとした口当たりです。焼アヒルは、中にオリジナルで配合した各種スパイスを入れて焼き上げているので、まったく臭みがありません。表面のパリパリ具合が見事で、包丁を入れるときに少し離れたところにいても「パリッ」という音が聞こえるほど。その「パリッ」はもちろん、口の中にも響きます! 
(丼ものにはスープとザーサイが付きます。また、焼味1種の場合は800円です。)

もつ盛り合わせ
焼き腸詰め(焼腸)、牛の胃袋(牛肚・ハチノス)豚耳、豚タン(豚利)、とんそく(豚脚)、豚レバーの盛り合わせです。内臓系は苦手といいながら、香港でそのおいしさに開眼してしまう人も多いとか。そんな苦手意識のある方でも問題なく味わえてしまう滷味です。ひと品ずつ微妙にちがう味付けがされているにもかかわらず、ちゃんとまとまった金陵の味。バラエティに富んだ食感が後を引いてしまいます。(仕入れ状況により、内容が変わる場合もあります。)

生きゅうり
たたききゅうりに、にんにくのきいたタレを絡めています。香港でも定番のひと品ですが、日本のきゅうりはたっぷりの水分を含んでいるため、サラダのようにさわやかな口当たりになっています。にんにくが大量に使われているにもかかわらず、後味がいいのも金陵秘伝のタレならでは。ひとり一皿軽くいけてしまうほどですよ!
お酒も楽しめるこちらの食事スペースに飾れているこのたんすは、文化革命以前のもの。お店の味と共に大事に守りつづけられて、食事に華を添えています。

家族から家族へ受け継がれています

オーナー夫人とお嬢さん。笑顔と優しい物腰に金陵の味を守る意気と金陵の味への愛情があふれています。現在は、家族5人、スタッフ3人の計8人で、80年以上続く香港の味を守り続けています。「伝統を守る」使命の中にも、店頭に手書きボードを掲げる今らしさもあって、攻と守が気負いなく素敵にミックスされています。家族ならではのあうんの呼吸で、これからも守りつつも進化する金陵の味が作り出されていくでしょう。

熱に包まれるような窯での作業、火の前に付ききりでのモツ煮の作業と、冬でもきつい作業があって、味わいのある焼味や滷味ができあがります。ただ「おいしい」だけでなく、そのおいしさにお店や家族の歴史も含まれているからこその金陵の味、ぜひ味わってみてください!香港ではファストフード的なものになりつつある焼味は、金陵では歴史を感じるスローフード。ちょっと視点を変えてチャーシューを見つめると、いろいろな香港が見えてくるかもしれませんね。以上、香港ナビ勝手に横浜支局がお伝えしました!

その他情報

■金陵 
神奈川県横浜市山下町132 (横浜中華街、関帝廟通り)
電話 045-681-2967
営業時間 11:00〜19:30
(持ち帰りは20:30ごろまで可能。ただし売り切れ次第終了となります)
定休日 月曜日
ホームページ http://www.kinryo.info/

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2008-03-26

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